水の都 柳川
水に守られ、水と生きる
柳川の中心部には、たった2km四方に60kmもの水路が張り巡らされています。
柳川市全域ではなんと930kmです。
なぜこんなにも長いのでしょうか。
それは、もともと柳川の一帯は海だったからです。
柳川は日本一干満の差(6メートル)を生み出す有明海と共にある地域です。
掘っても真水を得ることができない地形のため、
土を掘り、陸地化してそこに水を流すという仕組みが不可欠でした。
水はけをよくするために掘割を作り、掘り上げた土を盛ることによって陸化することで、少しずつ少しずつ、弥生時代より生活の基盤を築いてきたのです。
人々は掘割へ雨水をためることで、飲料水や生活用水、農業用水として利用してきました。
今では観光に欠かせない一面を持つ掘割ですが、不利な土地柄とうまく付き合い、「自然の大きな循環の中に人間もいる」ということを忘れなかった先人の知恵と努力の賜物が掘割です。
柳川の人々は掘割を舟でいくことを「川下り」と呼びます。
町のいたるところに掘割の船着場があります。かつては一家に一艘舟を持ち、交通手段として利用されていました。
御花の敷地内にも船着場が2つあります。
御花の正門にあるのは大昔に移築された門付きのもので、
当時のままに残される貴重な文化財です。
御花のお客様が利用できる特別な門であり、花嫁舟を迎える門でもあります。
門の向こうから船頭さんの呼ぶ声が聞こえてきます。
さあ、掘割を舟で進みながら柳川の一年を一緒に見てまいりましょう。
春
堀端に咲く桜の花びらが水面に揺れています。
川開きと共に柳川の春はやってきます。
柳川で古来より桃の節句を盛大に祝う風習があります。
水上パレードでは御雛様に扮した子供達や正装した雅楽隊が舟に乗って町中をまわります。
ここ柳川でしか出会えない、春の風景です。
夏
濃く色づいた緑の影から、アオサギが掘割の魚を狙っています。
夏です。
土用の丑の日に「うなぎのせいろ蒸し」を食べることはもちろん、柳川の夏には愉しみがたくさんあります。
納涼舟に乗り、夏の夜の掘割の静けさを味わうのもまた格別です。
秋
柳枝垂れる堀端に立派な歌碑が見えてきました。
“色にして老木の柳うちしだる我が柳河の水の豊けさ”柳川育ちの詩人北原白秋のものです。
毎年11月、柳川では白秋の命日を偲ぶ白秋祭水上パレードが行われます。
堀端には篝火が焚かれ、水面には行燈が浮かび、白秋作の歌が舟上のステージで披露されます。
幻想的な柳川の秋の夜です。
冬
真っ白な雪が掘割に降り注ぎます。
舟に用意したこたつに足を入れながら冬の柳川の景色をご堪能ください。
柳川では2月に掘割の水質を保つため水を抜いて掃除をします。
「水落し」です。
かつて秋に行われていた「水落し」は柳川の人々にとって一大イベントでした。
水を抜いた際、行き場をなくした魚やエビなどが掬い放題で大人も子供も一緒になって愉しんだようです。
白秋も詩集『思い出』の序文で「水落し」に触れています。
柳川雛祭り さげもんめぐり
柳川地方に古くから伝わる「さげもん」とは、お雛様と一緒に、天井から部屋いっぱいにさげられる、たくさんの色鮮やかな鞠や人形といった飾り付けです。
御花では「さげもんめぐり」のお祭り期間中、本館の「御役間」を中心に、雛壇とともに「さげもん」が所狭しとさげられます。初節句を迎える一般家庭や、北原白秋生家、商店街などにも、町をあげて盛大に展示されます。特に柳川の雛祭りは、水の郷ならではの「お雛様水上パレード」や「流しびな祭り」をともなう、大イベントとなります。
2023年度さげもんめぐり 2月11日〜4月3日
おひな様水上パレード:3月21日(火曜日・祝日)、
午前 11時~午後0時20分
※雨天時26日(日曜日)に順延
流し雛祭:4月3日(月曜日)、午前10時~